今回は、世界の刺繍をご紹介致します!各国の刺繍の特徴や歴史など、今まで知らなかった内容盛りだくさんです◎
・世界の刺繍を知りたい!
・刺繍が大好き!
皆さんは、国によって、刺繍が異なることをご存知ですか?
私は刺繍の作品を作っていることや、国際協力に関心があることもあり、世界にはどのような種類の刺繍があるのかとても気になっていました。(特に開発途上国の!!)
日本刺繍や、フランス刺繍は聞いたことあるし、海外へ行った際も市場で伝統的な刺繍を見たことあるけど、そんなに刺繍って種類あったの?と正直思っていました・・・。
実は、あるんです!!
刺繍は、その国の歴史や文化と関連して、特徴があることが分かりました。
今回は、そんな様々な国の刺繍についてご紹介したいと思います!特に、刺繍でよく聞く国だけではなく、マイナーな国の刺繍もまとめましたので、是非ご覧ください!
早速、一緒に見ていきましょう!
フランス刺繍
国名・地域 | フランス |
刺繍の特徴 | 様々なステッチを組み合わせ、自由に刺繍する |
歴史 | 教会や、君主、上流階級の貴族のためのものであった |
刺繍されるもの | 聖職者がまとう祭服、家具の装飾、壁掛け等 |
フランス刺繍といえば、ご存知の方も多いかもしれません。
一般的に私たちが刺繍と呼んでいるものは、フランス刺繍であることが多いです。
自分の好きなように下書きをして、その通りに糸を刺していきます。様々なステッチを組み合わせて刺繍を施して作品を完成させます。
元々、フランスの刺繍は教会で聖職者がまとう祭服や、君主・貴族の衣服、家具等に用いられていました。
教会では、大きな建物内を温かく保つための布に刺繍が用いられ、貴族は最高品質の刺繍を購入することが多く、上流階級の貴族には専属デザイナーや刺繍作家がいたとされています。
今や私たちの身近な刺繍ですが、昔は特別な人しか手にすることができなかったのですね!
刺繍といっても、機械によるものではなく手刺繍だからこそ、価値が更に高かったのかもしれません◎
ウクライナ刺繍
出典:ブックス赤ずきん
国名・地域 | ウクライナ |
刺繍の特徴 | シンプルだがエレガント、地方により使用される色が異なる |
歴史 | ウクライナの先住民族とされるクリミア・タタール人の時代に生まれた古代の刺繍 |
刺繍されるもの | 民族衣装、結婚式で用いられる伝統衣装等 |
ウクライナの刺繍は、先住民族クリミア・タタール人の時代に生まれました。
刺繍は、シンプルかつエレガントで、お花が幾何学に描かれているのがウクライナ刺繍の特徴です。
色は、中部・東部、西部、北部でそれぞれ異なります。
中部・東部は、パールブルーやグレーなどの淡色、西部は赤青緑黄などのはっきりとした明るい色、北部は赤青黒が主に用いられています。
同じ国の中でも違いがあるのは面白いですね!
日本でいう、都道府県によって違いがある感じなのかな~とイメージしました◎
テナンゴ刺繍 / メキシコ
出典:otomi mexico
国名・地域 | メキシコ・オトミ地方 |
刺繍の特徴 | 赤・青・緑などのビビットカラーが用いられる |
歴史 | オトミ文化の日々の出来事を表現している 1960年代の石油危機の頃に商業用が発展した |
刺繍されるもの | テーブルクロス、ナプキン、枕カバー、ベッドシーツ等 |
メキシコの刺繍をご覧になったことはありますか?
とてもカラフルでかわいいメキシコの刺繍は、オトミ地方の伝統的な刺繍です。
現在は、テナンゴ刺繍として知られておりますが、刺繍のデザインはオトミ地方の植物や動物をシンボルとして作られたのが始まりでした。
1960年代の石油危機により、元々はオトミ地方の伝統的な刺繍であったものが、商業用に販売されるようになり、広がっていきました。
今では、女性だけの仕事とされていた刺繍も、現在は男性の間にも広まっており、また刑務所などでのハンドクラフトプログラムの一環にもなっているようです。
ニャンドゥティ刺繍 / パラグアイ
国名・地域 | パラグアイ |
刺繍の特徴 | 刺繍や織物の要素が合わさっている |
歴史 | アメリカ先住民族のグアラニー族より伝わり、植民地時代に発展 17~18世紀の間にパラグアイに持ち込まれる |
刺繍されるもの | テーブルクロス、伝統衣装等 |
ニャンドゥティは、アメリカ先住民族のグアラニー族の言葉で「蜘蛛の巣」や「蜘蛛のオーラ」という意味があります。
三角形や長方形、円形を基盤につくられる伝統工芸で、針を用いて刺す刺繍の要素と、織物のような要素、また布を切り取るという独特の工程を踏みつくられます。
作品は、元々シンプルな白黒の刺繍でしたが、時代とともに現在のカラフルなものになったという一説もあります。
様々な技術が組み合わさったパラグアイのニャンドゥティ刺繍。
ぜひ、その精巧なつくりの作品を、直接見てみたいものですね!
パレスチナ刺繍
出典:SUNBULA
国名・地域 | パレスチナ |
刺繍の特徴 | クロスステッチとコーチングステッチが用いられる |
歴史 | 時代や地形と共に何百年もかけて変化した 花や草のような自然のものに影響されてデザインされた |
刺繍されるもの | 伝統衣装等 |
パレスチナの刺繍は、主にtatreezと呼ばれるクロスステッチと、 tahririと呼ばれるコーチングステッチの2種類で構成されています。
クロスステッチは、パレスチナ刺繍で最も用いられるステッチで、X字を刺繍していきます。コーチングステッチは、あまり知られていないステッチですが、布にとても細かいステッチで刺繍をしていきます。
刺繍は、花や草のような自然のものが幾何学的にデザインされており、昔は色も自然のもので染められることが多かったようです。
また、刺繍の色には意味が込められており、一部の地域では、未婚の女性は黒地に青の刺繍のドレス、既婚の女性は黒地に赤の刺繍のドレスを身に着けるとされていました。
富裕層の衣服には金や銀の糸を用いた刺繍が施されるなど、外見でその人がどのような身分なのか分かる仕組みになっていたのですね◎
チュニジア刺繍
国名・地域 | チュニジア |
刺繍の特徴 | 精巧な刺繍とともに宝石やスパンコールなどの装飾があるのが特徴 |
歴史 | 刺繍の色や装飾品で身分が分かるようにしていた 1956年の独立以降、輸入布の利用が増加したが、現在でも手刺繍が人気 |
刺繍されるもの | 伝統衣服等 |
チュニジアの刺繍は、デザインがとても精巧で、またそのデザイン性をさらに高めるために宝石やスパンコール、シルバープレート、真珠などの装飾が多く用いられます。
衣服に施された刺繍は、それを着ている人の身分が分かるように色やデザインが考えられているそうです。
その人が富裕層か貧困層か、職業は何か、住まいはどこか、既婚か未婚かなど、意味がたくさんこめられて刺繍が施されているなんて驚きですね。
パレスチナ刺繍と似ていますが、富裕層の衣服には金の糸が用いられており、衣服の生地がシルクやビロードのような高級の生地であれば、身にまとっている人がかなりの重要人物であることが分かりました。
一度でいいので、重要人物が着るという最高級の衣服を着てみたいものです!
セルビア刺繍
出典:Serbia.com
国名・地域 | セルビア |
刺繍の特徴 | 幾何学模様や花模様の刺繍が特徴 |
歴史 | オスマン帝国(旧トルコ)やバルカン半島などの異なるスタイルの刺繍が時代と共に合わさっていった |
刺繍されるもの | 民族衣装等 |
セルビアの刺繍は、オスマン帝国(旧トルコ)やバルカン半島など、様々な地域の刺繍が時代と共に組み合わされたユニークな刺繍です。
様々な異なる布が用いられて1つの衣服がつくられ、またその異なった布に施された刺繍も、ひとつひとつ異なります。それぞれの布が個性を出しながら調和し、セルビアの伝統衣服らしいユニークな作品が出来上がるのですね◎
刺繍の色は、赤色を基本とし様々な色が用いられます。
刺繍の量は比較的に多く思えますが、決して安っぽくなくエレガントな仕上がりになっています。
アレッポ刺繍 / シリア
国名・地域 | シリア、アレッポ |
刺繍の特徴 | バックステッチ、クロスステッチ、サテンステッチなど様々な技法を用いる |
歴史 | 将来の旦那さんが結婚式で着る衣装に刺繍を施す習慣があった |
刺繍されるもの | 結婚式の伝統衣装、衣服等 |
シリア北部の町、アレッポでシリア独自の刺繍、アレッポ刺繍ができました。
アレッポ刺繍は、バックステッチ、クロスステッチ、サテンステッチなどの様々な技法が用いられて刺繍されます。
衣服のボタン近くや、ズボンのポケット辺りは、強度を高めるために三角でキルティングされることがあり、その際はランニングステッチを用いるという習わしもあるそうです。
また、シリアでは、女の子は将来の旦那さんが結婚式で着る衣装に刺繍を施す習慣があり、その刺繍の技術を彼や彼の家族に示す意味も込められていました。
特にアレッポでは、結婚式のようなイベントでは、黄色、オレンジ色、白が用いられることが基本で、場合によっては白の綿布の上にシルクの糸で複数の色を用いて刺繍こともありました。
そんな昔からの習慣ですが、時代とともに変化し、現在ではシルク糸ではなく綿糸が主流となっています。
ベトナム刺繍
国名・地域 | ベトナム |
刺繍の特徴 | 手刺繍にこだわりがあり、糸は自然のもので染められていた |
歴史 | 刺繍は王族や貴族のものとされており、17世紀にベトナム刺繍の英雄がいるとされている |
刺繍されるもの | 伝統衣装、アオザイ、シルクのスカーフ等 |
ベトナム刺繍の歴史としては、17世紀に生きていたLe Cong Hanhという人物が、ベトナム刺繍を発展させた英雄とされています。
この人物が、ベトナムの民族刺繍作品やその技術を集約し、同時に普及を行ったとされているためです。
ベトナムの刺繍は、伝統的に女性がするもので、刺繍が施された衣服は王族や貴族のものとされていました。
私も、ベトナムへ行った際にマーケットで様々な作品を見ましたが、どれも本当に素敵でした!
コロナが収まった際には、また訪れて今度はもっとじっくり見たいな~と思います◎
カラド刺繍 / フィリピン
出典:Narra Studio
国名・地域 | フィリピン |
刺繍の特徴 | 伝統技術により透かしたような精巧な刺繍を施すのが特徴 |
歴史 | 漁師や農家の妻が暇な時間を埋めるために刺繍をしたのが始まりとされる |
刺繍されるもの | 結婚式の衣装、伝統衣装、ハンカチーフ、テーブルクロス等 |
フィリピンの刺繍の特徴は、レースに刺繍を施したカラドと呼ばれる技法です。
元々ある布の縦糸・横糸を刺す際に引っ張り合わせて縫い付けることで透かしたようなデザインを表現します。とても繊細な作業であることから、機械での生産は難しく、手刺繍が基本とされています。
刺繍は、主にピニャと呼ばれる、柔らかく丈夫なオフホワイトの布に施され、フィリピンの伝統衣装に用いられてきました。ピニャはスペイン品種の赤いパイナップルの葉を使用して生産されます。
フィリピンの刺繍の歴史は、漁師や農家の妻が暇な時間を埋めるために刺繍をしたことが始まりとされており、その後母から娘へと伝わり、男性へも広まっていきました。
今では、伝統の刺繍を学校でも教えようとする案が地方の教育機関で進められているとか、いないとか。
フィリピンにあるお土産やさんに、この伝統刺繍が施された衣装があったことを思い出します◎
その他
様々な国の刺繍を見てきましたが、ご存知であった国の刺繍はありましたか?
今回ご紹介した国の刺繍以外にも、沢山の国で個性豊かな刺繍があります。
名前だけではありますが、ご紹介致しますので良ければ何かの参考にしてみてください◎
・カザフ刺繍 / モンゴル
・ノクシタカ刺繍 / バングラデシュ
・ヤオ刺繍 / タイ
・カシミール刺繍 / インド
・グジャラート刺繍 / インド
・イーラーショシュ刺繍 / ルーマニア
・カロチャ刺繍 / ハンガリー
・ハーダンガー刺繍 / ノルウェー
名前を挙げればきりがないですね!
みなさんの気になる刺繍は、どの国の刺繍ですか~!
まとめ
今回は、世界の様々な国の刺繍をご紹介致しました!
よく聞く国の刺繍以外にも、世界には様々な国に独自の刺繍があることを知り、とても感動しました!
手工芸というのは、機械がつくられるよりも前から人々には身近で当たり前の存在です。手工芸の1つである刺繍は、その土地で人から人へ、時代を越えて、語り継がれてきたんですね。
刺繍作家になる者として、色々と勉強できてよかったです~!
皆さんのお気に入りの刺繍は、ありましたか~~?◎